賃貸管理スタッフには「他責も必要」な訳 ~自責ブームに警鐘を~

世間は「自責ブーム」

「すべては自分の責任」という“自責思考”が、近年のビジネス界では美徳のように語られがちです。

もちろん、自らを省みて成長につなげる姿勢は大切です。

しかし、賃貸管理の現場においては、過度な自責がかえって人材の疲弊や離職を招く原因にもなっている気がします。

そんな中、私は分譲マンション管理を皮切りに、賃貸管理を今でも行っております。

昔はこの「自責思考」に捉われ過ぎてしまい、一度は賃貸管理の仕事そのものを嫌になってしまった経験もあります。

そんな私ですが、ある時から仕事上で「程よい他責思考」を手に入れてからというもの、仕事が上手くいき、ストレスが軽減し、賃貸管理の仕事が好きになりました。

そこで今回は、管理業務のリアルな現場を踏まえ、「程よい他責思考」がなぜ必要なのかを解説してみようと思います。

一番は、この瞬間に辛い想いを抱えている全国の賃貸管理業務に従事している「同志」の支えになれば嬉しいです。

また、賃貸管理部門を持つ会社の社長や役員の方々にぜひご覧になって、参考にしていただければ幸いです。

そもそも不動産業は離職率高め

そもそも不動産業は全産業平均と比べても離職率は約13%~15%程となっており、やや高い傾向であります。

これは賃貸管理に従事する人だけを対象とはしていませんが、賃貸管理のスタッフの入れ替わりが激しいという点は同業者なら異論はないでしょう。

ちなみに米国での管理会社といえばPM(プロパティマネジメント)会社ですが、ここの離職率はなんと従業員の離職率が約33%/年 と推計された調査があります。元々雇用形態の違う米国とはいえ、この数字はやはり平均よりも高い数値であることが、賃貸管理業務でのストレスを物語っています。

※国内賃貸管理部門のみを対象とした統計は公的データとしては少ないため、あくまで「不動産業界全体の傾向」と「海外の業界データ」を参考として紹介しています。

現在日本では、労働者不足が深刻な問題となっており、特に日本語での対応が必須となる賃貸管理における離職率の高さは賃貸不動産会社を営むには今後対策が必須であることは想像に難くないでしょう。

ちなみに当社の管理スタッフは当社での在籍年数が8年以上となっております。

そもそも大きな会社と比べると社員数も少ないのでデータとしては参考になりませんが、それでもこの賃貸管理スタッフの「ストレス軽減」には細心の注意を払っています。

その対策の一つが「程よい他責思考」なのです。

それでは本題に入っていきましょう。

そもそも多くのトラブルは管理会社のせいではない

賃貸管理の仕事をしていると、クレームやトラブルに日々直面します。

その対応でオーナーと入居者、業者と入居者、仲介会社と自社などあらゆる場面で板挟みになるのが、管理会社の賃貸管理スタッフです。

しかし、よーーーく考えてみましょう。

そもそもトラブルのほとんどは

管理会社が原因で起こっているわけではありません

  • 入居者同士の騒音トラブル
  • 近隣のゴミ問題
  • 経年劣化による設備の不具合
  • 天災地変
  • 家賃滞納

これら代表的なトラブルの原因が管理会社の責任であることはほとんどありません。

というか、このようなトラブルはどんなに気を付けていたとしても定期的、必然的に発生するものですよね。

こういったトラブルに対応する為にいるのが「管理会社」なのですから。

管理会社は“対応者”であって、“原因者”ではないケースがほとんどです。

にもかかわらず、「自分の対応が悪かったから…」「自分の説明が足りなかったから…」と、自責で考え続けると、心身ともに疲弊していきます。

自責で考えすぎると、ストレスが限界に

真面目で責任感の強い人こそ、賃貸管理スタッフとしては優秀です。

しかし、こういった人材こそ「すべて自分の責任」と抱え込んでしまいがちです。

この思考こそが、精神的な負担となり、最悪の場合は離職にもつながります。

まさに自責思考の被害者となってしまいます。

本来は称賛されるべき、自責思考、真面目さが却って自分を苦しめてしまうのです。

そして、限界を迎えたスタッフは会社や業界を去ってしまうという、なんともやり切れない結末を何度も見てきました。

そんなスタッフにおススメしたいのが、この「程よい他責思考」です。

程よい他責思考とは?

実践編です。

まずは重大なトラブルが耳に入った瞬間に、こう思いましょう。

「俺のせいじゃねーよ」

この表現は各自変えていただいて結構ですが、私はこのように思っています。たまに口にも出しています。もちろんお客様、オーナーさん、同業者には言いません。

「そうだ、このトラブルの原因は自分ではないんだから」とセットします。

言い方を悪くすれば他人事にするのです。そうすると、不思議と冷静になれます。

前述したように賃貸管理のでは「問題が起きないようにすること」も重要ですが、本質的には「起きた問題にどう対応するか、できるか」で価値が決まる仕事です。

先ほど例として挙げたトラブルは正直どれも「いつか起こること」であり、避けられないものです。

つまり、「起きてしまったこと=失敗」ではなく、「どう収めたか=成果」なのです。

まずはここがスタートラインです。

「自分には限界がある」という事実

もう一つの思考として大切なのが

「自分ではどうしようもない範囲がある」ということを割り切りましょう。

これは「投げやり」や「他人事」ではなく、事実です。

なぜなら賃貸管理で起きる問題は最終的には自分だけではどうしようもないことがあります。

代表的な限界は

  • 修繕や金銭を伴う判断は「オーナー判断」
  • 犯罪に関することは「警察」
  • 法律や条例の問題「裁判所」「弁護士」
  • 設備のトラブルなら「業者」

ね?

こういった部分はどんなに賃貸管理スタッフが頑張ろうとも、どうにもなりません。

勝手に法律を飛び越えることもできませんし、その権限もありませんし、やってはいけません。

こういった事実を冷静に整理し、「ここからが自分の出番だ」「これ以上は自分の範囲外だ」と割り切る思考が、現場では非常に重要です。

責任を押し付け合うのではなく、事実として他の要因を認識し、自分の役割に集中する。

私はこの思考方法をスタッフに伝える時にこんな風に言っています。

「まずは諦めることからスタート」

  • 起こってしまったことを悔やまない
  • 次に自分が出来ることを洗い出す
  • やった方がいいことを淡々と行っていく

逆にそれ以上のことは出来ませんからね。

こうやって言われると当たり前のことなんですが、トラブルで気が立っている人やこちら側を責めてくる人がいると、ついつい「自責思考」になってしまうのです。

このように自分の限界をしっかり把握して、出来ることだけをしっかりやる。

この「最初に諦める」ことで、最短でかつ最小限の被害で終わることが出来たりするのです。

まずは落ち着いて、着実に業務を行う為のステップですね。

我々はピンチに輝くヒーローだ

もちろん、「他責だから自分は関係ない」と開き直ることは、プロではありません。

そして「他責だから日頃の予防は必要ない」という訳でもありません。

起こさなくていいトラブルや予想されるものは、予めできる限り潰しておくのもプロの仕事です。

関係ないから対応しない、ではなく、関係ないからこそ冷静に対応する、です。

自分のせいではないからこそ、冷静にこの局面を最小限の被害、最高の結末にもっていく

逆境にこそ現れるヒーロー、それこそが管理スタッフなのです!

呪術廻戦の五条悟、シティーハンターの冴羽獠、ドクターXの大門未知子、アベンジャーズのトニー・スターク、キングダムの楊 端和などなど

我々はピンチの時にこそ現れる「頼れるアニキ」ポジションなのです。

カッコイイ・・・・・

冗談はさておき、本当に賃貸管理スタッフというのは非常に責められやすい構造になっています。

入居者から、オーナーから、業者から、時には自社の営業部門などから・・・

だからこそ、この「程よい他責思考」というのは自身の精神安定剤しても、良いお仕事をするため、冷静でいる為にも必要だと思います。

「全部自分の責任だ」と思い込むことは、誠実さの裏返しですが、それが自分自身を追い詰めてしまっては本末転倒です。

感覚として「自責:他責=6:4」くらいのバランスで考えるくらいが、現場ではちょうどいいのかもしれません。

「人のせいにしていい」と言いたいのではなく、「人のせいにしないと潰れてしまう仕事がある」という現実を、もっと業界全体で共有すべきではないでしょうか?

ちなみに当社ではクレームの最後方には私が直接対応します。

最後はどんな問題でも持ってきていいよ!とスタッフには本気で言っています。

そういった上司や会社からの「最後の逃げ道」も必要だと思っています。

こんなことを書いておいてなんですが、こういった思考を持つようになってから管理の仕事の楽しさに気付きました。

今では天職だと思っていますし、この「最後に出てきて、問題を解決して感謝される仕事は最高」と思っています。

全国でお悩みの同志のみなさん

起きてる問題はそもそも「あなたのせいではないですよ」

ではまた

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