(17ページ目)「家賃を下げる」も空室対策の一つ ~管理会社が知る意外なメリットとは?~

負の側面だけではない

多くの大家さんが「家賃を下げる」という選択肢に対して否定的なのはよく理解できます。

家賃の値下げは、収益を直撃する決断だからこそ、慎重にならざるを得ないものです。

しかし、家賃の値下げが必ずしも「損だけ」になるとは限りません。

もちろん、管理会社としても賃料は上がった方が助かります。

出来る限り高い家賃を目指しているのも事実です。そこに異論はありません。

今回は、管理会社として長年の経験を通じて得た知見をもとに、家賃を下げることで得られる意外なメリットをお伝えします。

特に物価高による修繕コストやリフォームコストが上がった昨今だからこそ、この禁断とも呼べる手段は考慮するに価するのです。

家賃を維持・上昇させるためのコストを考える

まずは、家賃を維持または上昇させるためには、物件の魅力を高める必要があります。

物価高になり、賃金上昇の局面に入ったとはいえ、それでも現状は実質賃金がマイナスという状態です。

この状態で空室が発生したからというだけで家賃上昇を目指すのは、簡単なことではありません。

今までの賃料が相場に比べて廉価過ぎた、ということでない限りはリフォームやメンテナンスを実施することも必要でしょう。

たとえば

  • 古くなった設備を交換する(エアコン、給湯器、キッチンなど)
  • 壁紙や床材を新しくする
  • 外壁や共用部の修繕を行う

もちろん、最低限貸し出す為の修繕はいかにコスト高とはいえ必須になります。

この修繕・リフォームには数万~ときには百万円単位のコストがかかる場合もあり、費用対効果を考えると必ずしも得策とは言えないケースもあります。

現在の資材高と人件費高の状況では、家賃の上昇幅や維持に関するコストと見合うかは検討が必要です。

対して、家賃を少々下げることで空室がすぐに埋まるなら、リフォーム費用を抑えながら早期に収益化できる可能性があります。

長期入居を促し、安定収益を確保する

ここからは家賃の値下げの隠された効果についてご紹介してみようと思います。

その一つが「長期入居の可能性が高まる」です。

家賃を下げると、その分だけ入居者の「コストパフォーマンス満足度」が向上します。

結果として、長期的に住み続ける傾向が高まり、退去リスクを軽減できるのです。

相場の上限ギリギリの家賃設定では、常に「もっと安くて良い物件がないか?」と入居者が考え、他の物件に引っ越す可能性が高まります。

一方で、適正な家賃または少し割安な設定にすることで、以下のような効果がうまれます。

  • 住み替えの動機が生まれにくい
  • 家賃の支払いに対する不満が減る
  • 収入の変動があっても無理なく住み続けられる

入居者が住んでいる間には、ライフステージにより様々な変化が訪れます。

そんな時に頭をよぎる「お引越し」という選択肢

その時に、自分の家賃が「割安」「適正」と考えられるような場合には「お引越し」=「解約」は思い浮かばないことでしょう。

しかし、入居者さんが「割高」と感じた場合は他へ移るという選択肢を取っても不思議ではありません。

一人の入居者が長く住んでいただくことで「空室期間の損失」を防ぐことになります。

私がこれまで経験している物件例でも、相場より賃料が割安な場合、平均居住年数が長引くというのは顕著です。

この手法を意図的に取り入れている大家さんがおりますが、所有物件(12戸)はここ3年間満室で退去は1件も無いという強者もいらっしゃいます。

空室期間の損失を抑える

空室が出ることによる損失は、実際には家賃の1カ月分だけではありません。

  • 広告費
  • 原状回復費用
  • 返済費用

収益用物件はいかに「空室を生まないか」が最重要であるかについては異論はないと思います。

実際の費用だけでなく、業者さんとの打ち合わせなどの手間や時間も掛かってくるわけです。

空室期間が長引くにしたがって、このコストは増大してしまいます。

家賃を下げることで少しでも早く入居者が決まるのであれば、結果的にトータルの収益でのパフォーマンスは家賃向上と比べると、大きな差が生まれないという点も考慮の余地があります。

また②の「長期入居」も居住年数を伸ばすことにより、この「空室損」を発生させないというのは、ある意味「肉を切らせて骨を断つ」に近いものを感じます。

それなりに理にかなった方法でもあるのです。

まとめ

「家賃を下げる」という選択肢は、一見するとマイナスだけのように思えます。

確かにデメリットが数多くある方法の一つではあります。「売却時の利回りが下がる」「入居者層が変わる」「収益性の悪化」こういった副作用があるのは当然です。

しかし、長期的な入居者を獲得し、空室リスクを減らし、無駄なリフォーム費用を抑えるという点で、大きなメリットがあるのもまた事実です。

管理会社としての経験から言えるのは、「家賃を下げる」というのはあくまで、数多くある空室対策の一つの手段であり、それが最適な戦略となるケースもあるということです。

昨今は大家さん側の情報発信が盛んになってきており、大家さん側の意見からすれば「家賃値下げ=悪」と感じられるのは当然だと思います。

事実、大家さん向けの書籍やセミナーでは「家賃UPを目指す」や「家賃値下げは絶対NG」などを多く目にします。

どんな空室対策もメリットとデメリットが表裏一体なのです。

家賃UPを目指すなら長期間の空室リスク、維持修繕コストなども覚悟せねばなりません。

どんな薬も副作用があるかのように、家賃の値下げも空室対策の手段の一つに過ぎません

正しくリスクを把握して使いこなすのであれば、空室対策として有効な面も持っているのです。

物件の状況や市場の動向を踏まえ、柔軟に空室対策・家賃設定を検討することが、結果的に安定した賃貸経営につながるでしょう。

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