インボイス制度Q&A③ ~賃借人からの予想問題編~

今回は悪意も想定して、対応策を検討しておきましょう。予想は外れてくれたらうれしいです。

インボイス制度開始後に来そうな質問

インボイス制度が始まると、免税事業者の物件を借りている課税事業者からの要望や問い合わせが多くなると思います。


今回は制度について善意(知らなかった)も悪意(知っている)も含めて、言われそうなことを事前に予想してみました。


それに対応する形での対策をご紹介してみます。

あくまで、言われそうな事項については想像になりますので、外れてくれたら幸いです。

①いきなりの1割値下げ

「インボイス制度が始まったので、消費税分の1割を値下げしてください」


そう、こういった値下げ要求はあろうかと思います。


前回の記事でもお伝えした通り、インボイス制度対策として「有効だと思えるなら登録も値下げもしたらよい」と書きました。

しかし、このような値引きについてもしっかりと学んでおかないと、必要以上の収益を失うことになります。


このケースですと、免税事業者を継続するというオーナーに対して課税事業者の賃借人が消費税分の賃料値下げをお願いしたということです。


もちろん、賃料の値下げについてはオーナーの任意です、するもしないも決める権利はあります。


そして、今後のことも考慮して「値下げ」を容認する場合ですが

まずは差額負担でもいいのでは?

と思っています。

というのは以前に記事にした通り、今回のインボイス制度では「経過措置」というものがあります。

この経過措置の詳細は記事でご確認いただければと思いますが、内容としては

制度開始後の3年間は免税事業者からの仕入も80%控除し、その後3年間は50%を控除 計6年間の経過措置期間がある

という内容になっています。

ですから例えば免税事業者のオーナー物件で賃料月額11万円(税込)だった場合は、消費税分1万円の中の80%=8千円は控除されます。

ということは差額として月2千円が課税事業者の負担ということになります。

この分を値下げしてもいいのではないでしょうか?


少なくともこのケースですと、1万円をすぐさま値下げした場合はオーナーの収益は1万円下がります。

そして、その場合課税事業者は10万円(税込)の消費税分9090円×80%=7272円の控除を受けられます。課税事業者の自己負担は9090円-7272円=1818円となります。年間で21816円ですね。

年間では12万円の収益減となったオーナーに対して、課税事業者の負担は年間で21816円です。

これはさすがにオーナー負担が大きい気がします。

対して仮に賃料を2千円減額して10みましょう。

10万8千円の消費税分9818円×80%=7854円の控除が受けられます。課税事業者の自己負担は9818円-7854円=1964円となります。年間で23568円です。

どうでしょう、オーナーの収益減2000円×12か月=24000円とほぼ同額となります。

お互いにとっても悪い話ではないように思えます。実質どちらも痛み分けといったところですからね。

もちろん、その場合でも契約の変更となりますので、しっかりと契約変更を行い、経過措置終了を見据えておかねばなりません。

3年後は50%分の値下げに応じるのか?経過措置終了後はどうするか?という点はお互い確認をしておいた方が良いでしょう。

しかし、インボイス制度について知らなければ1割の値下げに応じないといけないのか?と思われる可能性があるでしょう。

その為、インボイス制度については貸主も知らなければいけません。



②免税事業者のオーナーへ免税事業者からの値下げ交渉

インボイス制度では免税事業者同士の取引については影響がほぼありません。


なぜなら課税事業者が負担した消費税との差額を納付する為の仕組みですから、消費税を納めない免税事業者はインボイス制度にそもそも関係ありません。免税事業者からの消費税分の値下げについては課税事業者、免税事業者どちらのオーナーも断っても賃借人に影響はありません。


ないとは思いたいのですが、関係ないからこそインボイス制度をよく知らない免税事業者から消費税分の値下げ交渉があったらどうしましょうか?


これは正直ほとんど無いと信じたいのですが、無知か悪意かは別として返答を用意しておきましょう。


まずは賃借人が課税事業者かどうか一応確認してみましょう。


この時に相手方が免税事業者とのことであれば、お互いに影響がないことを説明し、値下げ交渉を断っても大丈夫です。


今のところ、免税事業者からの賃料値下げ交渉は通常の「家賃下げて」と一緒です。


平時に賃料交渉があったとして受けるオーナーは少数ではないでしょうか。


しかし、免税事業者が課税事業者のように交渉してきた場合、どうやって相手方がインボイス登録しているか確認したらよいのでしょうか?

③相手先がインボイスに登録しているか分からない

インボイス制度が開始したのちも相手先のインボイス登録を調べる機会も増えるでしょう。どうやって調べればいいのでしょうか?


インボイス登録番号が分かれば国税庁のサイトで調べることができます。


国税庁インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト

このサイトでは、適格請求書発行事業者の登録を受けている事業者の情報を公表しています。

ここで注意なのが、インボイス発行事業者公表サイトで調べるには

登録番号での検索しかない

ということです、名前や住所など他の情報で調べることはできません。


そして出てきた情報をクリックしたとしても分かるのは「登録番号」「氏名・名称」「登録日」などと限られております。


住所や連絡先などは出てきません。恐らく個人事業主も数多くいるため、個人情報に配慮した結果なのでしょう。


ともかく、登録番号を聞いて検索すると出てきます。それしか方法がありません、もちろん取引先には公開しているため、登録番号を特段の秘密にすることもありません。


ですから取引先となる賃借人が申し出た場合は、一応確認してもいいかもしれませんね。

④賃貸借契約書に税込、税抜きの表示がない時はどうしたら?

基本的には内税(消費税を含んでいる)とみなされるようです。


というのは、免税事業者だろうが課税事業者だろうが、物をレンタルすることには消費税が掛かってきます。


消費税を取る取らないというのは、一個人や法人で決めるものではありません。


とすると、記載がないから「今までは消費税を取っていなかったんです」と言ったとしても難しいでしょう。


今まで払ってきたという実績と含めて内税であったと解されるようになるのです。


ですから、インボイス制度を機に賃借人に消費税を加算します。というのは、正当事由として認められるかはいささか合理性に欠ける内容になってしまいます。


しかし、これから万一消費税が10%から増税された場合などは正当事由にあたる為、増額分を家賃に反映させることは可能であると思います。

今後、店舗や駐車場の契約書を作成する際には、免税事業者とはいえ、税込表示をなるべく避けるか、税込表示であるならば


税法の改正により消費税等の税率が変動した場合、改正以降は消費税等相当額は変動後の税率で計算した金額とする。


というような、「消費税が上がったら金額も変わりますよ」という一文を条文に付け加えておきましょう。

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