(7ページ目)大家もつらいよ ~「物価高騰」による家賃上昇は根拠があるのか?データで見てみよう~

不動産賃貸業は物価高騰と相性が悪い

昨今、世界的なインフレに見舞われております。

日本も例外ではありません。

食料品も含めて全ての商品が値上げを続けており、我々のお財布を直撃しています。

そしてついに、不動産に関する物も例外ではなくなってしまいました。

それは

建材費と人件費の高騰です

建材費はコロナ禍から始まり、ウクライナ紛争なども相まって「ウッドショック」という木材の値上げに端を発し、その後も全ての建材費が上がり続けております。

また、高齢化や少子化の影響で、現場で働く職人さん不足も追い打ちをかけております。

それによる新築価格の上昇とリフォーム価格の上昇が引き続き猛威を振るっております。

新しく建てる物だけではなく、修繕コストも上昇するなか、首都圏や大都市部では

家賃上昇が叫ばれております。

入居者のみなさんから見ると

「家賃値上げは嫌だ!」「本当に不動産に関する物価高騰してるの?」「大家が払うべきだ」と思われるかもしれません。

当然私たち管理会社も気持ちは分かります。

家賃の値上げとなれば毎月の生活費も上昇するわけですから、歓迎する入居者さんはいないことでしょう。

ここで入居者さんの思いを代弁してみましょう。

「本当に高騰しているの?便乗値上げじゃない?」

確かに、当然思われることでしょう。

一方、不動産会社や大家さんも疑問を持たねばなりません。

本当に不動産に関するコストは上がっているのか?どのくらい上がっているのか?

これを把握しないでおいて、単に「なんか物価上がってるみたいだから家賃を上げます」はあまりに感覚的すぎます。

今回は大家さんも入居者さんも双方ともに

物価は高騰しているのか?上がっているとしたらどのくらいなのか?

を検証してみましょう。

データから読み解こう

こちらは一般社団法人日本建設業連合会で発表されているデータです。

元データはこちらからどうぞ

https://www.nikkenren.com/publication/handbook/chart6-3/index.html#link01

こちらはオレンジが「建設用材料計」で茶色が「製材・木製品」緑が「窯業・土石製品」青が「鉄鋼」紫が「金属製品」となっております。

数値の見方としては2020年の価格を100として、各年代の推移を表しております。

コメントでは「建設用材料計は、2018年後半から緩やかな上昇が続いていたが、2021年から急激な上昇に転じた。特に、製材・木製品、鉄鋼の上昇が著しく、鉄鋼は中国の経済成長とコロナショックからの世界的な経済活動の再開により、また、製材・木製品は米国の住宅需要の拡大と2022年2月に始まったウクライナ危機の影響による。」となっています。

このデータから読み解くとすれば

  • ウッドショックと呼ばれる木材などは2022年をピークとしているが、以前高い
  • 鉄鋼は高止まりである
  • その他についても緩やかながら上昇傾向

推移の比率を見ても少なくとも20%以上の高騰を続けているのは事実でしょう。

次に具体的な製品と気になる「人件費」についてのデータを見てみましょう。

https://www.nikkenren.com/sougou/notice/pdf/jfcc_pamphlet_2501.pdf

こちらも2021年を基準とした各製品の資材価格の推移と業種別の労務単価の推移を表しております。

ここから読み解けるものは

  • 資材の高騰は紛争以外にも様々な要因が組み合わさっており、一つの問題が解決しただけでは収まらない
  • 労務費については業種を問わず上昇傾向である
  • いわゆる材工ともに大幅に上昇している

総括すると

コストは間違いなく上がっている

では、このことをもって「家賃上昇は不可避なのか?」について語ってみようと思います。

地価と物価の切り分け

ちなみにこの「家賃の増減」については、現行の借地借家法で取り決めがあります。

(借賃増減請求権)第32条

  1. 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
  2. 建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
  3. 建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。

実はこのように曖昧な書き方になっているのです。

土地もしくは建物に対する租税その他の増減によりという言葉は

固定資産税や物件が上昇したら と読み解けるような内容ですが、それが「どの程度に至ったら?」は明記していません。

当然民間住宅に対する値段を法律で決めるというのは、いささか無理があるものです。

私はここで「家賃上昇はやむなし」と賛成する立場でもなければ、反対に「家賃上昇はダメだ」と言いたい訳ではありません。

管理会社として、「賃借人も大家も事実を踏まえたうえでの協議をすべき」という立場です。

なぜなら

適正な家賃でなければ双方共倒れ

実は大家も賃借人も、どちらも極端に走りすぎると「共倒れ」になるのです。

考えてみれば当然なのですが

大家さん側に立っても「家賃はドンドン値上げだ」としても、どこまでも上げることは出来ませんし、上げすぎた場合は「退去者は出るが、入居者は入らない」という事態になるだけです。結局、収益は悪化してしまいます。

逆に賃借人さん側にたって「家賃は絶対に上げない」とした場合、採算が取れなくなった大家さんは不動産賃貸を辞めてしまい、住める物件が減ってしまいます。賃貸物件が少なくなって希少になった場合は、やはり市場の作用で家賃は上がってしまいます。

どちらの理屈に振ったとしても極論的な行動は、結局自分の首を絞めるだけなのです。

大家も入居者も「おたがいさま」なのです。

自分だけが得しようとしても、大きな市場である不動産では上手くいかないでしょう。

借りてくれる入居者がいなければ、大家は困る

貸してくれる大家がいなければ、入居者は困る

借りる人、貸してくれる人がいなければ不動産屋も困る

大事なのは、しっかりと事実をもとにした協議である訳です。

あくまで家賃は「適正」であるべきであって、「高くも安くもない」が最善ではある訳ですね。

今回のデータなどを元に大家側も入居者側も、冷静で「適正」な議論を行って欲しいです。

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