
ガイドラインの立ち位置は?
さて、本日もインターネット上では盛んに議論が巻き起こっている話題です。
それは
退去した後に退去者の元に届く「退去精算」問題です。
大体の構図としては
ボッタクられたという入居者VS正当な費用請求だというオーナー(管理会社)
ちなみに我々管理会社は本来は中立の立場ではあります。
しかし、退去精算書を作ったり、原状回復工事の依頼を受けることがほとんどですから、実際はオーナー側といえるでしょう。
古来より続くこの論争に大きな分岐点が訪れたのは1998年のこと
あまりに多すぎる退去精算トラブルに業を煮やした国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を発表したのです。
それまでは、各物件のオーナーや管理会社により基準がまちまちだった原状回復の範囲を、国土交通省が線引きをしたという画期的なものでした。
以降、退去精算にまつわる裁判ではこのガイドラインに準拠するような判決が積み重なり、一定の線引きとなりました。
しかし、現在でもSNSを中心に退去精算にまつわるトラブルはやみません。
それもそのはず、この国土交通省が示したガイドラインはあくまで「ガイドライン」となっており、ガイドライン内でも書いてあるのですが、簡単にいうと、このような曖昧な線引きです。
「このガイドラインは絶対ではないからね、本来は当事者同士が決めることだけど、揉め事が多いから基準を示すけど、あくまで目安だからね」という感じです。
これは「契約自由の原則」という、「個人と個人が結ぶ契約は、公序良俗に反しない限り有効」という立場に基づいたものであります。
司法の場でも、ガイドラインに沿った判決もあれば、「契約自由の原則」だから仕方ないよね。という判決もあるのです。
一言でいうと
基準は、借主も貸主も、分かりづらいよね
未だに不動産業者も線引きが分かりづらく、入居者も分かりづらい
そこで今回は「退去精算ルールを厳格化した未来はどのようになるのか?」についてシミュレーションしてみましょう。
まずは基本的な考え方から

まずは現在のガイドラインについて簡単にご説明しましょう。
大体示されているのはこんな感じです。
- 通常使用で劣化、破損するものは貸主負担
- 故意や過失で汚したり壊したら借主負担
- 住むのに必要な設備や機能維持は貸主負担
- だけどガイドラインは絶対ではないから、もしガイドラインとは違う約束をするなら契約書にしっかり書いてね
詳細を見たい方は「国土交通省 退去精算 ガイドライン」で検索してください。
本当はもっと細かいのですが、それを書いていては進みませんので割愛します。
しかし、これを見て思うことでしょう。
「それはどっからどこまでの範囲を言ってんの?」と
じゃあ、ちょっと椅子を引きずってしまった細かい傷は?汚れがついたけど「故意過失」と判定する基準は?設備を交換した証明は?
キリがありませんね・・・・・
そこで今回はあえて
ガイドラインを超拡大解釈して、誰しもが異論を挟めないように、退去精算で絶対揉めないルールを作ってみましょう。
そしてそうなった未来で起こることを検証してみましょう。
設定するルールは
原状回復は、借主の故意過失を含めて、全額貸主負担とする
いかがでしょうか?
揉めようがありませんね。
入居者からすれば夢のような状態です。オーナーからすればたまったものではありませんが。
このブログは同業者とオーナーが見ている割合が高いのですが、石が飛んできそうなルールですね。
実際、現在のガイドラインはかなりといっていいですが「入居者有利」です。
そのガイドラインから逸脱しないようにするなら、このルールになるでしょう。
現在のガイドラインで揉めてしまうのは、前述の通り「ガイドラインはあくまでガイドライン」だという余白のような部分がある為です。
そうであるなら、いっそのこと絶対に揉めないように余白を一切消す。
逆に「退去精算は全額入居者負担」というルールでもいいじゃないか?という不動産業者やオーナーから声がありそうですが、こちらは理由があります。
「全額入居者負担」では余白が有り過ぎるのです。
経過年数はどう考慮する?毎回部屋をフルリフォームするのか?などと考慮すべきことがあります。
また、国土交通省が目指す「消費者保護」の観点から現実的ではありません。
その為、今後も入居者VSオーナー(不動産業者)が続く場合には、ひょっとしたら実施されそうな
「原状回復は、借主の故意過失を含めて、全額貸主負担とする」を今回は採用して、シミュレーションしてみましょう。
ちなみに、私たちの会社では基本的にはガイドライン通りの退去精算を行っております。
そのため、弊社では退去精算で揉める割合というのは100件あって、ようやく1件でしょうか?
裁判までいく例となると経験はありません。
このような書き方をすると「入居者に媚びやがって」と思われそうですが、一方で酷い使い方の退去者に当たると思うのです。
「流石にこの状態で返されたら費用は請求させてくれよ!」と
もちろん、酷い使い方をした入居者さんには正当に請求します。
しかし、そんな人に限って
「ガイドラインでは貸主が負担するものって書いてあるんですけど!」と言ってきます。
ガイドライン制定の弊害ともいえる主張がくるのです。
一方で、確かに不当に請求するオーナーや不動産業者がいるのも事実です。そういった人の言い分は「ガイドラインはあくまでガイドラインだから」
私はどちらにも言いたい!
「ちゃんとガイドライン読んで!」書いてあるからと
しっかりと読めば書いてあるんです。オーナー(不動産業者)と入居者の範囲が
それでも皆、自分にとって都合のいい部分しか読まないんですよ。
今回はこのような余白を一切消す為に「原状回復は、借主の故意過失を含めて、全額貸主負担とする」というルールで起こる未来を示してみましょう。
まずは貸主(不動産業者)へ

まずはこのルールになった時の貸主(オーナー)と不動産業者です。
苦渋のルールであることでしょう・・・・
しかし、このような事態に陥ってしまった原因は、古来のオーナーや不動産業者に責任の一旦があったのです。
以前はルールが無かったために、不当に請求して私服を肥やすオーナーや不動産業者、またリフォーム業者がいたのも事実。
貸主の立場の濫用と言われる振る舞いをした先人たちがいたためです。
その昔、まだお部屋の供給が足りていない時代に「貸してやるぞ!」という立場の強い貸主が、我が物顔でふんぞり返った結果です。
そういったことが無ければガイドラインなど出来なかったことでしょう。
なになに?
「今はそんな時代じゃない!我々は供給過多の状態で頑張ってサービス精神を持って、入居者の為に頑張っているんだ!」ですって?
でも、仕方ないんです・・・これからは
- 収入は厳然たる「家賃だけ」という事実を受け止める
- 家賃だけで原状回復を賄う
- そのうえで収益を獲得できるように運営する
このように頑張ってください。
そうですね、あなたに罪はありませんが、清廉潔白な社会のためです。
苦渋の決断ですが、一切揉めないようにする社会の為にご理解ください。
入居者への影響は?

つづいて入居者への影響です。
よかったですね、これで今後は不当な請求に怯えることはありません。
なにせ原状回復は貸主負担と決まりました。
このルールでいくならば、たとえ故意でなくとも発生してしまった「うっかりキズ」をつけてしまったり、タバコのヤニがついたとしても退去時に請求されることもありません。
そして人類はようやく終止符を打つのです。
入居者VSオーナー(不動産業者) の退去精算戦争に
消費者保護を実現することが出来ました。
あなたに請求されるのは月々の家賃だけです。
その支払いだけを行っていれば、どんな使い方をしても、追加は起こりません。
なにせガイドラインで示したような曖昧なルールは、もうありません。
これで一件落着です。
「え?」
「これまでと同じ家賃を払っていればいいんですよね?」ですって?
そんな訳ないじゃないですか
もし、あなたのお隣さんがヒドイ状態で退去した場合はどうするんですか?
確かに原状回復は貸主負担ですが、そうすると一部屋でも酷い状態で出て行ったら、貸主は多額の出費が出ますよね?
「貸主は家賃しか貰えない」んですよ。
そうすると、家賃は値上げせざるを得ないでしょう。
酷い使い方をする人が出る想定をしておかなければ、貸主は破産することになるでしょうからね。
家賃だけで原状回復を賄う必要があるのであれば、普段から備えの為に貯金しておく必要がありますからね。
「破産するのは貸主の勝手じゃないか?」
確かに、不動産投資ですから、そういったリスクもあるかもしれませんね。
そうしたらどうしましょう。
そのようなリスクが高いものになった不動産を買う人や運営する人はいなくなりますね。
そうすると結局、お部屋が減っていき、供給減により家賃は高騰するでしょうね。
残った貸主も原状回復が全額自己負担ということであれば、保険として全世帯に高い家賃を請求しなければなりません。
そうしておかないと、たまに酷い使い方の借主が出たら、原状回復でマイナスになってしまうかもしれません。
善良な入居者さんにも、万一出るかもしれない酷いお部屋の分をリスク分散として支払ってもらわないと・・・
やはり家賃は値上げせざるを得ないでしょう。
「私はキレイに使ったのに!」
そうですね、あなたに罪はありませんが、清廉潔白な社会のためです。
苦渋の決断ですが、一切揉めないようにする社会の為にご理解ください。
まとめ「厳格すぎるルールはお互いを縛る」

さて、いかがでしたでしょうか。
今回は双方に起きることとして、起こり得る未来を想像してみました。
私が今回言いたかったのは
「国土交通省のガイドラインはよくない」とか「悪徳不動産業者やオーナーが悪い」とか「入居者が消費者保護ばかりうるさい」などでは決してありません。
あまりに清廉潔白な社会を目指し過ぎると、「善良な人たちこそ」不利益が起こる
ということです。
社会のルールは必要です。
そしてルールは守るべきです。
しかし、そうやってルールで縛り過ぎた社会は窮屈で時に
「大多数の普通の人たち」こそが一番被害を被ってしまうのです。
この原状回復にまつわる争いは本来シンプルなのです。
- 借主は出来る限り注意してキレイに使う
- 貸主はキレイに使ってもらったなら、余計な費用は請求しない
たったこれだけのことなのです。
そうすることで「貸主は家賃だけで収益を目指す」「借主は余計な費用を請求されない安心」両者の想いは一致するのです。
それを「どちらが悪い」と言い過ぎたり、自分勝手なことを繰り返せば繰り返すほど
全部いつか自分たちの首を絞めるのです。
一部の人たちのせいで厳格化したルールではこの
善良な借主、善良な貸主 こそが迷惑をこうむるのです
本来はこの善良な人達が一番尊重されるべきです。
キレイに使ってくれた人には余計な請求はせず。
不当な請求をしない貸主の所に入居者がたくさん来て
という原理原則に則った運用を目指すべきですが、今回のように、ルールが厳格化すると
- 借主は、キレイに使おうが、誰かのために高額な家賃を負担させられる
- 貸主は、原状回復が認められないから、高い家賃を設定せざるを得なくなる
結局一番損するのは大多数の「普通の人たち」です。
現在の社会は白黒ハッキリつけたがる社会になってきた気がします。
ミネラルウォーターのような不純物がない川があったとして、そこに魚は棲めるのでしょうか。
私たちは一点のミスや間違いも犯すことのない完璧な人間なんでしょうかね?
それでも厳格化したいというなら、その責任を負う覚悟は持っておきましょうね。
それは借主、貸主双方ともにですよ。
厳格なルールに例外はありませんからね。






