
事故物件と供養について
今回は事故物件が発生した場合の供養や御祓いについて、管理会社の立場からご紹介してみようと思います。
事故物件とは俗称で、不動産の専門用語としては「心理的瑕疵物件」と呼んでいます。
この心理的瑕疵物件は人が亡くなったことだけを指す言葉ではありません。中には反社会的勢力の拠点が近いなどの違った要因も含まれます。
要は「人によっては気にするかもしれない」事情を指しています。
建物や部屋は機能的にも問題なく使えるが、過去の経緯を知ったら気分が良くないや不安が生じる。などの場合ですね。
この内、今回は人が亡くなったお部屋を対象として、お部屋で供養や御祓いをする場合についてお話してみようと思います。
お部屋で人が亡くなったら全て供養やお祓いをした方がよいのか?という問いには「告知事項該当するような場合だけでよい」と思っております。
ちなみに私は個人的には無宗派に分類されるであろう感覚です。特定の宗教や宗派を推すこともなければ、どんな信教でも自由だと思っておりますので、宗教観のお話は今回はしません。
この供養や御祓いをする場合の詳細について体験談とともにご紹介しましょう。
供養やお祓いは必要か?

まずは事故物件への供養やお祓いの必要性についてお話していきましょう。
私は先ほども書いた通り、無宗派です。しかも幽霊の存在も信じておりません。
そんな私ですが、事故物件での供養やお祓いは
絶対にやっておいた方がいい
と思っています。
もちろん後述する通り、費用が発生することは間違いありませんが、やった方がよいと思います。
特に私と同じく無宗派や幽霊などの存在を信じていない方でも「やっておいた方がよい」と思います。その理由としては
- リフォーム業者や不動産業者のため
- 次の借主への説明
- 自分自身の気持ちの問題
- 売却時のため
それぞれ簡単にご説明しましょう。
①リフォーム業者や不動産業者のため
これはそのままですが、特にリフォーム業者や大工さんは人が亡くなった物件はお祓いなどしないと入ってもらえない方もいらっしゃいます。
大工さんや業者さんは特に縁起やゲンなどを古くから気にする方が多いものです。
また、不動産業者は慣れているものの、状況や死因などによっては気が引けるというのも理解は出来るものです。
お祓いをしたから告知事項などが消えるわけではありませんが、入ってくれる方たちへのせめてもの気遣いとしておススメします。
②次の借主への説明
これもお祓いをしたから気にしなくなる。といえるほどの効果はありません。
事故物件に住む方というのは、本当に気にしない方だといえます。
少しでも気になる方は正直おススメしません、家賃が安いという理由もあるのかもしれませんが、経験上「気になるけど安いから我慢する」というタイプはあまり見たことがありません。
それでも重要事項の説明時やご紹介時に「亡くなっていますが、その後お祓いはしております」と伝えると一様に安心していただけます。
事故物件になってしまった事実は変えられませんが、次の入居者さんに不安などを残さない為にもやっておいて損はありません。
③自分自身の気持ちの為
自分自身の為というのは気にする方だけでもいいのかもしれません。
私も無宗派で幽霊の存在は信じていませんが、お祓いに立ち会うと不思議と気持ちが晴れる感覚があります。
私は常々「亡くなった方が後片付けなどを行った人を怨むようなことはしない」と思っています。
それでもお祓いなどに立ち会うと亡くなった方も安心してくれたかな。と思ったりします。
オーナーさんの立場からしても「今まで住んでくれたのだから」という気持ちでやっておくと、自分自身のためというのは、あながち無視できないかもしれませんね。
④売却時のため
正直、これが一番の理由かもしれません。オーナー目線で見ると、お祓いというのは気持ちの問題であることには変わりはありません。
しかし、いつか物件を売却する時などには大きく効果があると思います。
告知事項の回では触れましたが、最近の売買では過去の出来事などをしっかりと説明することが多いものです。
また告知事項を故意過失で伝えないと売却後に契約不適合責任を負わないとも限りません。
心理的瑕疵物件であることは売却時に伝える必要があるでしょうが、この時にも「当時、しっかりと対応してお祓いもしました」という記録が残っていれば、売却時の評価はそこまで損なうことはないでしょう。
また購入者目線になると、事故物件になってもしっかりとお祓いなどをするしっかりとした所有者なんだ。
そんな人が持っていたのであれば、良い管理状態かもな。という印象にもなり、プラスの材料になることでしょう。
不動産売買のうち、賃貸物件の売買においては「心理的瑕疵」というのは説明はせねばなりませんが、その対応次第では物件のメンテナンス履歴同様、馬鹿には出来ません。
費用について

次に費用面をご説明していきましょう。
その前によく聞かれることとして「事故物件の供養やお祓いはお寺か神社か?」ということを聞かれます。
これについては、神社とお寺の供養や御祓いの立場や意味合いを理解して選ぶ必要があります。
私がこれまでにお坊さんや神主さんに聞いた内容として
- 神社のお祓いは「その土地やお部屋でお祓いをすることで、土地や空間を清めて、今後暮らす方の平穏や幸せを祈願する」という意味合いが強く
- お寺の供養は「亡くなった方が負の感情を持ったりしないように、故人を供養したり成仏してもらう」という意味合いが強いようです
お寺の供養は故人の霊を供養という意味合いが強く、神社は土地やお部屋を清めるという似て非なるものだと思っています。
お話を聞く限り、お寺の方はあくまで故人に対してであり、神社は土地や部屋に対してという感覚です。
もちろん、どちらが良い悪いというのはありません。ご自身の考え方次第でしょう。
費用面の説明に戻ります。
費用面では神社とお寺での違いはほとんどありません。費用相場は地域や神社やお寺とのお付き合いにもよるのですが、とはいえ相場もあるようです。
費用はおおよそ2万円~10万円程度となります。
幅が随分とある印象ですが、これは亡くなり方により増減することがあります。
自然死であれば下の方ですが、自殺、殺人などになると費用面も増加していく傾向にあります。
亡くなった人数や建物全体や土地など範囲が広くなることでも増加していくことがあります。
いずれにしても、お寺や神社にお願いする時に死因や現在の状態、範囲などを聞かれますので、しっかりと説明し、前もって費用面の相談をしておきましょう。
個人的には土地やお部屋を清めて、今後の方の平穏や幸せを祈願するという意味合いが強い神社にお願いすることが多いものです。
ご自身で手配する以外であれば管理会社に聞いてもらえれば、対応してくれることが多いことでしょう。
供養や御祓いをするタイミング

次に供養や御祓いをする時期についてご説明します。
これは若干、現場の要望とズレてくることがあります。
現場に入る方は「先に供養やお祓いをして欲しい」となることでしょうが、あまりにお部屋に痕跡や匂いなどがある場合は、供養やお祓いを引き受けてもらうことは難しいでしょう。
というのも、事故物件の内容によりますが、事故物件の後で特殊清掃が必要な場合があります。
特殊清掃というのは、人が亡くなった結果、お部屋の損傷が激しかった場合に入る清掃です。
具体的には血痕や体液、場合によっては発見が遅れてご遺体の損傷が激しいなどの衛生面や匂いなどが強い場合に行う清掃です。
このような状態の場合、入る業者さんは先に供養や御祓いを行って欲しいと要望があるかもしれませんが、現実的にはこの段階ではお坊さんや神主さんは対応が難しいことがほとんどです。
その為、このような状態の場合は特殊清掃業者に依頼し、痕跡が無くなる程度までの回復をする必要があります。
そして、損傷個所があらかた無くなった段階で依頼することになります。
こちらも事前にお寺や神社に相談のうえで対応していきましょう。
また、入っていただく業者さんにも事前に相談することは言うまでもありません。
黙って依頼しても、業者さんは分かるものです。仮に黙って依頼したとしたら、今後の依頼を引き受けてくれない可能性もありますし、業者さんへの敬意不足と取られても仕方ないものです。しっかりと正直に相談しましょう。
お祓いで準備することや当日すること

ここまでの準備が全て終わり、いざ当日になった場合の対応をご説明します。
今回は神社でのお祓いを例にしますが、お寺でも大差はありません。
まず、当日こちらで準備するものを事前に聞いておきましょう。
神社にお願いした場合、お供えものをこちらで用意しなければならないこともあります。
お酒(清酒)、お米、塩(粗塩)、水、果物や野菜などになりますが、こちらは神社側で用意してくれる場合もありますので、事前に確認しておきましょう。
また神社にお願いする場合はお金は「初穂料」として準備しておきましょう。
服装ですが、一般的な喪服であれば一番良いでしょうが、地味なスーツやスラックスにシャツなどで、カジュアル過ぎないものであれば良いと思います。
当日、時間は1時間ほど見ておけば十分だと思います。
準備から終了まで合わせても30分~1時間程度で終わることでしょう。
また、大事なこととして
お祓いしてもらったことを証明できるようにしておきましょう
神社やお寺によっては「お祓い証明」や「供養証明書」を出してくれることもありますが、そのような証明書が無い場合は
写真や動画にて記録しておきましょう
お祓いや供養は形が残るものではありませんし、本来証明するようなものではありません。ですが、だからこそ証明するものを持っておけば先々の不安を解消することに役立つからです。
月日が経った時に、取引の相手方となる買主や借主から「お祓いした証明はあるのか?」という疑問に答えるには、証明するものを持っておいた方が無難です。
冒頭にある写真もその為に撮影したものです。
ここで注意すべきは
写真や動画を撮影することを神主さんやお坊さんに前もって許可を得ておく
この時も事前に神主さんに
「お祓いを行った証明として撮影してもいいでしょうか?」と確認しました。すると
神主さん「祝詞の最中などでなければ結構ですよ」と快く対応してくださいました。
くれぐれも無断で撮影などはしてはいけませんよ。
個人的には動画までは必要ないと思っておりますので、この時も写真だけ撮らせていただきました。
後は神主さんやお坊さんの指示にしたがい、粛々と故人のご冥福をお祈りすることです。難しいものはありません。
一通り供養やお祓いが済むと神主さんやお坊さんから儀式の意味などの説明があったりしますが、その中でも心に残っているのは
「この場所に次にお住まいになる方の平穏や幸せを祈願しています」という言葉です。
私は信心を持ち合わせていないのですが、なんだかお部屋全体が清らかな空間になったような気がしました。
また、心の中で故人の方へのこれまでの感謝や旅立ちに立ち会ったことに対する、何ともいえない感情になりました。
事故物件のその後と思うこと

ちなみに、今回の写真のお部屋は自然死により亡くなった方のお部屋でした。
発見もそこまで遅くはありませんでしたが、経年劣化もあった為、お部屋自体は壁紙や床を張り替えた程度のリフォームでした。
そして気になるかもしれませんので、家賃の下落はというと
以前の方より少し高くなりました
もちろん、事故物件としてしっかりと告知もしておりますし、お祓いしたこともお伝えしています。
以前の方が長くお住まいだった為、どちらにしても原状回復をしなければなりませんでした。
お部屋をキレイにしたことと、お祓いをしたことで、次の入居者さんは「気になりません、十分です」とのことでした。
自然死であったことも要因でしょう。
私は賃貸管理に携わるものとして常々思っていることがあります。
霊というものは信じていないが、仮にいたとしても故人の後始末や次に入る方を怨むような人はいないだろう と
そして、私も皆さんもいつの日にか、人間として生まれた以上、必ず人は亡くなってしまいます。
同じ人として、亡くなった方を化け物扱いしたくはありません、縁あって住んでいただいた方ですからね。
お祓いや供養というのは感情としても、実際の運営上でも、しておいた方がよい。
ということがお伝えしたかったことのです。






