(13ページ目)同じ日本でこんなに違う?不動産売買の「関東vs関西」ルールと、気になる鹿児島はどっち?

不動産の世界には、法律や教科書には載っていない「地域の掟」のようなものが存在します。

同じ日本国内、しかも同じ「不動産売買」という行為なのに、境界線を一歩またぐだけで、それまでの常識が通用しなくなる。

これを知らずに県外の物件に手を出したり、あるいは県外の買い手と交渉を進めたりすると、決済当日になって「そんな費用、聞いてない!」と顔を真っ赤にして揉めることになります。

土壇場になって大きな金額でトラブルになるのは、売主も買主も同様でしょう。

であれば、最初からトラブルの芽を摘んでおくのが一番の合理的な解決策です。

今日は、特に関西と関東で大きく分かれる「3つの商慣習」について、簡単にご説明しようと思います。

ちなみに私は不動産業を始めたのが、東京だったので、賃貸では「礼金あり」「契約更新料1カ月」に慣れ親しんでいました。

鹿児島に帰ってきてからは基本的に「礼金なし」「契約更新は〇万円」に違和感がありましたね。

「関東方式」と「関西方式」の簡単な説明と、では鹿児島ではどうなの?というところをご紹介したいと思います。

「敷金・保証金」

まず、収益物件を扱う上で避けて通れないのが「敷金・保証金」の扱いです。

賃貸マンションなどを1棟丸ごと売買する場合、売主は入居者から「敷金」を預かっていますよね。

この敷金、退去時には入居者に返さなければならない「債務」です。

所有権が移れば、この返還義務も新しいオーナー(買主)に引き継がれます。

これについては、最高裁判決でも示されている通り、全国共通のルールです。

物件に住んでいる人たちからすれば、知らない間に所有者が変わったからといって、自分たちが預けた敷金が勝手に無くなったというのは、たしかに無理筋な気がしますから、ここは当然だと思います。

問題は、その「現金」をどう動かすか、です。

この問題について、「関東」と「関西」はハッキリ違います。

関東方式では、売買代金から敷金の総額を差し引いて決済します。

例えば、1億円の物件で敷金が2,000万円預けられているなら、買主は売主に8,000万円だけ払えばいい。

手元に2,000万円のキャッシュが残るから、急な退去があっても安心です。

ところが、関西方式は違います。

「敷金の持ち回り」といって、敷金分の現金は一切渡されません。

1億円の物件なら、1億円を丸々支払います。

「えっ、じゃあ入居者が退去する時の敷金返還は?」というと、買主が自分のポケットマネーから出すんです。

関東の人からすれば「二重払いじゃないか!」と叫びたくなるような話ですが、関西では「その返還リスクも含めて、最初から安く値付けしているんでしょ?」という理屈なんです。

どちらも「買主が敷金返還債務を引き継ぐ」のは一緒なのですが、関東方式の「売買代金から後で引く」のか関西方式の「もうすでに売買代金から引いている」という認識の違いなのです。

この感覚のズレですが、契約直前に発覚すると、まず間違いなくトラブルになります。

そして当の本人たちは、この違いを知らない限り、自分たちの今までの「常識」があるため、中々途中からは受け入れにくいものでしょうね。

「固定資産税の精算日」

次に、固定資産税・都市計画税の精算日です。

これが実は、実務上もっとも「え、そんなに違うの?」と揉めやすいポイントです。

固定資産税は、その年の1月1日時点の所有者に1年分が課税されます。

年度の途中で売買する場合、引渡しの日を境にして、それ以降の分を買主が売主に支払って精算するのが通例です。

問題は、その1年を「いつからいつまで」と捉えるか、です。

関東方式は、1月1日を起算日とします。

つまり、1月1日から12月31日までを「1年」と考えます。

対して関西方式は、4月1日を起算日とします。

役所から納税通知書が届く「年度」のサイクルに合わせ、4月1日から翌年3月31日までを「1年」と考えるわけです。

これがどう影響するか、具体的な数字でシミュレーションしてみましょう。

例えば、年間の固定資産税が36万5,000円(1日あたり1,000円)の物件を、「3月1日」に決済するとします。

関東方式(1/1起算)の場合
売主の負担:1月1日〜2月28日(59日間)= 5万9,000円
買主の負担:3月1日〜12月31日(306日間)= 30万6,000円

関西方式(4/1起算)の場合
この場合、精算対象は「前年度の残り(3月分)」になります。
売主の負担:前年4月1日〜2月末日(334日間)
買主の負担:3月1日〜3月31日(31日間)= 3万1,000円

結構違いますね。

見ての通り、3月1日に決済をするなら、買主としては「関西方式」の方が、その場で売主に支払う精算金が圧倒的に少なくて済みます。

逆に、売主からすれば「関東方式」で精算したほうが、手元に残るお金が増えるわけです。

たった3ヶ月の起算日の違いで、この例なら27万円以上の差が出ます。

これが1棟マンションなどの大きな取引になれば、差額はさらに膨らみます。

さらに、関西方式(4月1日起算)を選んだ場合に、実務上で最も神経を使うケースがあります。

それが「1月1日から3月31日の間に決済を行う」というシチュエーションです。

ここには、非常に厄介な問題が潜んでいます。

固定資産税というのは、その年の1月1日時点の所有者に課税されます。

たとえ3月1日に名義を変えたとしても、春先に役所から納税通知書が届くのは「元売主」のところなんです。

もし、関西方式で2月1日に決済をしたとしましょう。

この時、精算するのは「前年4月1日から、今年の3月31日まで」の残り期間分だけです。 これでお互いスッキリ……とはいきません。

問題は、4月1日から始まる「新しい年度」の税金です。 この分は、当然ながら新オーナー(買主)が負担すべきもの。

しかし、4月以降に届く納付書の宛名は「元売主」のままです。

ここで何も手を打たずに決済を終わらせてしまうとどうなるか。

数ヶ月後、新しい年度の税額が確定したタイミングで、元売主が「通知書が届いたから、あなたの負担分を払ってください」と買主に連絡し、そこからまたお金のやり取りをしなければなりません。

一度終わったはずの取引で、また相手と連絡を取り合う。

これは、お互いにとって非常にストレスですし、連絡が取れなくなれば即トラブルに発展します。

一番避けたい「終わらない仕事」の典型です。

だからこそ、「次年度の精算」も同時に行っておくのがおススメです。

「新しい年度の税額はまだ確定していませんが、去年の金額をベースにして、次年度分も今ここで精算してしまいましょう」

つまり、新しい年度の1年分(またはその相当額)を、決済時にあらかじめ「予納」のような形で精算してしまうのです。

税額が多少前後したとしても、後から追いかける手間やリスクを考えれば、その場で「お互いこれ以上はなし」と決めてしまう方が、よほど合理的でスッキリします。

教科書には「税額が確定してから再精算する」と書いてあるかもしれません。

でも、そんな正論は現場では通用しません。

後からお金の話をするのは、誰だって嫌なものです。

「あの時、キッチリ終わらせておいてよかった」

そう思ってもらえるように、今のうちに次年度の分まで計算機を叩く。

そういった背景もあってか、精算の方法として分かりやすいのは1/1を起算日とした「関東方式」かもしれませんね。

司法書士への「売渡費用(報酬)」

最後にお話しするのが、登記の専門家である「司法書士」に支払う費用の負担についてです。

不動産の売買が決まると、法務局にある「登記簿」の内容を書き換える必要があります。

この手続きは、通常以下の4つのステップで進みます。

1.売主の「住所変更登記」 (今の住所と、登記簿上の住所が違う場合に行います)

2.売主の「抵当権抹消登記」 (売主がローンを完済した証として、銀行の権利を消します)

3.売主から買主への「所有権移転登記」 (これが売買のメイン。名義を正式に切り替えます)

4.買主の「抵当権設定登記」 (買主がローンを組む場合、銀行の権利を新しく付けます)

この4つのうち、誰がどの費用を出すのか。

ここでも、関東と関西で明確な「作法」の違いがあるんです。

関東方式は、非常にシンプルです。 「自分のためにやる手続きは、自分で払う」という考え方です。

1と2(売主の準備)は売主が払い、3と4(買主の権利)は買主が払います。

つまり、売主の住所が変わっておらず、ローンもなければ、売主が司法書士に支払う報酬は「ゼロ」になることも珍しくありません。

ところが、関西方式はここでも独特の商慣習が顔を出します。

なんと、メインイベントである「3.所有権移転」の費用を、さらに細かく二つに分けるんです。

一つは、名義を移すための「登録免許税(税金)」や、実務的な手続き費用。

これは買主が負担します。 そしてもう一つが、「売渡(うりわたし)費用」と呼ばれるものです。

これは、司法書士が売主の本人確認をしたり、権利証を確認したり、登記に必要な書類を作成したりするための「売主側の手間賃」のようなものです。

金額にしておよそ3万円から5万円程度。

関西では、この「売渡費用」を売主が負担するのが一般的です。

関東の感覚でいる売主さんに、「関西の物件だから、売渡費用として数万円払ってください」と伝えると、十中八九「なぜ名義を変えるのは買主なのに、私がそんなものを払うんだ?」と不審に思われます。

逆に、関西の感覚でいる買主さんが関東方式の物件を買うと、「売主が売渡費用を払わないなんて、不親切な業者だ」と感じてしまうかもしれません。

また、関西方式の特徴としては、司法書士が売主側と買主側で別々になることが多いのです。

双方ともに自分のことだけを行う司法書士に依頼する訳ですね。

関東方式では、一人の司法書士にお願いすることが多くなるのです。

じゃあ鹿児島はどっちなのさ?

ここまで関東方式と関西方式の不動産売買の慣習について説明してみました。

他にも各地域では、独特の習慣や方式があるようです。

さて、私たちが活動している鹿児島はどうなっているかというと、現在は基本的に「関東方式」が主流です。

敷金は差し引きますし、固定資産税は1月1日起算、司法書士さんもお一人にお願いするのが一般的です。

ただ、ここで大切なのは「どちらの方式が正しいか、優れているか」ではありません。

不動産というのは、その土地に根ざした、動かすことのできない資産です。

だからこそ「郷に入っては郷に従え」という言葉があるように、その土地の作法を尊重することが、一番のトラブル防止になります。

大事な取引だからこそ、思い込みで進めるのではなく、一つひとつ丁寧に「今回のルール」を確認してほしい。と思っています。

その小さな確認の積み重ねが、大きなトラブルを未然に防ぎ、皆さんを守ることに繋がるからです。

せっかくの不動産との出会いが、最後まで良い思い出になりますように。

皆さんが安心して取引を終えられることを、心から願っています。

ちなみに、賃貸でも全国各地で習慣が変わっていたりします。

またどこかで「賃貸編」も書いてみましょうかね。

ではまた

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