飛び降り事件後の遺族のまさかの一言

この事件は私にとっても色々と考えさせられる事件でした

東京での分譲マンション管理時代

今から10年ほど前の話しです。

当時私は東京で分譲マンションの管理会社に勤めていました。

分譲マンションの管理というのは賃貸管理と似ておりますが、各住戸ごとにオーナーさんがいるという形態になるため、賃貸用の物件とはまた少し違うところも多いのですが、今回はそこはおいておきましょう。

ある夏の日にとあるマンションの管理人さんから連絡がありました。

「内田さん、○○○号室の方がベランダから飛び降りた」

私の担当マンションでした。

私はすぐに電車を乗り継ぎ現地へ向かいました。

荒れた室内

画像はイメージです。実際はもっとヒドイ状態でした

私が駆け付けた時には既に警察の方が多数おりました。

そして、残念ながら被害者の方は亡くなったことを知りました。即死だったとのこと。

しかし、現場にはおびただしい量の血液が残っており、生々しい状態でした。

被害者は当時上層階に住んでいた若い女性でした、こちらの記録によると夫婦2人暮らしとなっていました。

警察から旦那さんには連絡済で、今現在こちらに向かっているところとのことでした。

私は警察立ち会いの元、室内の様子を一緒に確認して欲しいとのことで室内へ入室しました。

頭と両手足にビニールを付け、マスクをして入室すると、そこは・・・

荒れた室内、服や物が散乱しています

そして、ペット可でありましたが、小型犬がケージに3匹いました。知らない人が多数入ってきたせいか、キャンキャン吠えていました。

そして更に異様だったのが各所で見る以下の光景でした。

  • 枕がズタズタになっており、ハサミと包丁が刺さっている
  • 台所シンクにオロナミンCの空き瓶
  • ユニットバスのドアパネルが蹴られたように大きな穴が空いている
  • 写真がビリビリに破かれて散乱している

一目で理解できますね。

そう、被害者の方は心の病を抱えていたのです。

ご自身の幼少期の写真も引き裂いていたり、枕に突き立てられた包丁などは、実際に見ると中々のインパクトでした。

残された写真を見ると、健康だった当時のものでしょう。キレイな奥さんと笑顔の素敵な旦那さんがテーマパークで仲良く写っていました。

こんなに幸せそうなのに・・・

印象的だったのは、破かれた写真がどれもこれも自分自身(奥さん)の部分をビリビリに破いていた点でした。

帰ってきた旦那さんの一言

ついに到着した旦那さん、その反応は意外でした。

旦那さんが到着しました。

私は勝手に自分に当てはめていたのでしょう、帰ってきた旦那さんの反応に驚きました。

泣くこともなく、笑顔こそ無いものの、取り乱した様子もなく、ただただ淡々と警察官と話しています。

今日仕事に行くときも妻は普通だった、何時ごろ家を出た、奥さんの親族には電話をしてあること、病院の場所など

表情も喜怒哀楽のどれでもない真顔で淡々と話すその姿に困惑しました。

亡くなったにも関わらず、配偶者すら涙を流してくれないのか・・可哀想にと思いました。

勝手に奥さんに同情してしまった私は警察官に断って、一旦室内から出ました。

そして、廊下に灰皿が置いてあったので、そこで鬱屈した気分を晴らす為、タバコを吸いはじめました。
※当時の話です。もちろん廊下(共用部)でタバコは本来絶対にダメですよ。

すると、ひと段落したのか旦那さんも室内から出てきました。

私はあまり良い印象を持っていなかったのですが、会釈をして「この度はご愁傷様です」と声を掛けました。

旦那さんは「どうも」とだけ発すると

「僕にもタバコ一本もらえませんか?」と言ってきました。

私はタバコを一本とライターを渡しました。

旦那さんはタバコに火を点け、廊下にある階段に腰掛けました。

無言でタバコを吸う2人

会話もなく、ただただ横目で眺めるように旦那さんを見ていました。

すると、旦那さんは自分を見ていた私の目線に気づいた様子でした。

そして、私の感情に気づいたのでしょうか

私に一言だけ

「僕もね、辛かったんですよ」

あぁ、そうか。

あの室内を見れば病状がどれほどだったのか、少しだけ分かります。

恐らく、この事態に至るまで色々と積み重ねがあったのでしょう。

しかし、亡くなるその日まで、少なくとも旦那さんは一緒に生活をし続けていました。

あの荒れた室内で

私は自分の価値観や物差しだけで測ったことが恥ずかしくなりました。

旦那さんの一言に何も言えずに、また会釈だけしてその場を離れました。

その後、私は実況見分から解放されました。

しかし、仕事は残っていました。

そう、飛び降り現場の処理ですね。

もちろん、ご遺体などは救急が運んで行ったのですが、血痕はまだ残っていました。

他の入居者も帰って来る時間帯ですから、まずは水で流しておいた方がいいと思いました。
※現在では管理会社はこのようなことを原則として行いません、管理会社はそこまでしなくても大丈夫ですからね。

私はデッキブラシとホースで血を流しながら、色々なことを考えていました。

被害者は居たが、加害者は居たのか?今回のことは悲劇なのか救いなのか?こうならない方法はあったのか?

なんとも言えない感情でした。結論もでませんでした。

ただ、流れていく血を見ながら、亡くなった奥さんと残された旦那さんの幸せばかりを願っていました。



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