
実は9割以上の騒音は解決する
前回から騒音問題解決の難しさや、何が解決の障害となっているかを書いてきました。
しかし、この「騒音問題」ですが、体感では9割以上はすぐに解決します。
騒音問題での一般的な解決としては、音の苦情が寄せられた場合
①書面で全体もしくは該当住戸への注意喚起
②書面で収まらない場合、該当住戸への直接連絡
③解約を見据えて該当住戸への警告
だいたいこんなプロセスを踏んでいきます。
しかし、①の書面による注意で大体90%位は収まります。
「そうか、自分が出した音がうるさかったんだな、注意しよう」
こんな感じなのでしょう、これで大体収まります。
みなさん、普通の入居審査を経ているので①で大体90%以上、②までいけば98%位は解決します。
しかし、これをくぐり抜けた残り2%の騒音問題はかなり厄介なのです。
そして、この少数のケースこそ、高い壁に阻まれて解決が困難なのです。
4 強力すぎる「借地借家法」
次にあげる項目が「借地借家法」です。
この借地借家法という法律ですが、本来素晴らしいものです。
全体の主旨としては
「大家より立場の弱い借主を守ろう」
という法律です、ですから「大家の意向だけでは退去させられない」とか「少々の違反があったとしても、よほど悪くなければ解約してはいけないよ」という法律になっています。
要は立場の弱くなりがちな入居者を「大家」や「管理会社」から守ろうとする法律なのです。
この素晴らしい「借地借家法」ですが、一度入居者同士の問題になると凄まじい壁となってしまうのです。
よく、騒音に悩まされる方から
「こんなに迷惑な音を出す方は追い出した方がいいんじゃない?」と言われます。
実際、感覚の違いなどでもなく、上下階などで影響のあるレベルの音を出す入居者というのは稀にいます。
そして、一般的な契約書などにも「他の住民に迷惑を及ぼすような騒音、その他の行為~」などが禁止事項として入ってもいます。
「じゃあ、それに違反したんだったら契約解除できるでしょう」
そんなに簡単にできないんです!「借地借家法」があるから
そう、ここで出てくる借地借家法、入居者の権利というのは非常に強いんです。
簡単に住まいを奪われてはいけないから「借地借家法」は出来ているのです。確かにそれはその通りです。
しかし、入居者同士になるとお互いに「借地借家法」に守られているため、どちらかを一方的に追い出す権限は「大家」「管理会社」ともに持っていません。
そして、契約解除するには、前回書いた通りですが
「受忍限度を超える必要がある」
受任限度というのは「音が不愉快なのは分かるが、ここまでは普通のことだから我慢しなさいよ」という基準です。
この「受忍限度」ですが、騒音については特に基準があいまいです。
音についてもこんな感じです。
騒音がしたとしても
- 音の具体的な内容(何をして音を発生させてるか)
- 音の性質
- 音の頻度
- 音の発生時間帯
- 音の継続時間
- 音の継続期間
- 周辺環境の状況(閑静な住宅街と賑やかな商店街では違う)
これらを超えたものが「受忍限度」を超えるという「騒音」なのです。
ハードルが高いのです、基準があるようで曖昧なのです。
各サイトなどでは騒音の基準として「○○デシベル以上は騒音」と書いてあったりします。
しかし、「受忍限度」というのを超える為には、一時的な音だけでなく、周辺環境など様々なものと組み合わせないといけないのです。
ここに騒音問題の難しさがあるのです。
聞こえる「騒音」と法的な「騒音」の違い
このように、聞こえる「騒音」と法律が契約解除を認める「騒音」の違いがあるのです。
もちろん、聞こえる「騒音」が一番の被害となってしまうのですが、法的な「騒音」まで該当しないと契約解除などは難しいのです。
基本的には共同住宅では「受忍限度」という考え方はなければいけません。
「どんな物音も少しでも立ててはいけない」となると誰も住めません。どんなに強固な建物でも多少の物音はしますし、みなさんもそこまでのことを求めている訳ではありません。
しかし、法的な「騒音」と認められるには期間や周辺環境なども含めて認められる必要があるのです。
そして、そこにある基準は絶対的なものではなく、曖昧な基準となってしまっているのです。
実は多くのオーナーも「人の迷惑になるような入居者だったら正直、出て行ってほしい」と思っています。
なぜならそういった人がいることで「普通の入居者」が多く出ていってしまったら、そちらの方が損害が大きいのです。
しかし、本来入居者を守る為の法律が入居者同士の問題では強力に加害者を守ってしまうのです。
5 お互いが感じる被害者意識の調整
音の問題で厄介な問題として「音の感覚」という点をあげてきました。
そして、更に厄介なのが「被害者意識」です。
これはどういうことかというと、一旦近隣トラブルに発展した場合、苦情を「申し立てた方」と「言われた方」という対立構造が生まれる場合があります。
「申し立てた方」からすると、解決を望むのですが、「言われた方」は時に「なんで言われないといけないんだ?」との感情を持ってしまう場合があります。
管理会社としては近い距離にお住いの関係ですから、この被害者意識を発生させないことが第一の任務と言ってもいいと思います。
その為、「言われた側」が極力「被害者意識」を持たないように慎重な言い回しをしなければなりません。時に騒音を「申し立てた側」からすると、「もっと強く言って欲しい」と思われるかもしれませんが、この「被害者意識」が「申し立てた方」に行かないように慎重に進めなければならないと思っています。
それは、管理会社であれば知っている過去の痛ましい事件なども起因するからなのです。
6 過去の悲惨な事件
前述した通り、不動産管理会社をしっかり取り組んで勉強している会社であれば、なおさらですが、騒音問題を語る時に思い起こされる事件というのがいくつかあります。
非常に有名な事件でいえば「ピアノ殺人事件」と呼ばれた事件です、これは騒音だけが問題ではなく、他にも加害者の複合的な問題も重なっての事件ですから単に騒音だけが問題とはいえないのですが、その他にも「騒音」問題で起こる最悪な結末というのは少なからず毎年どこかで発生しています。
そして、注目すべきは加害者は騒音問題に対して「申し立てた方」と「言われた方」どちらも発生してしまうのです。
我慢できなくなった方と「なぜ私が責められないといけない」という方、どちらも感情を爆発させてしまう可能性があるのです。
このようにデリケートな対応が必要であることを管理会社は肝に銘じておかねばいけません。
どちらかの感情が高まり過ぎているようであれば、警察などの介入をお願いするなど、非常にデリケートに対応していく必要があります。
また、申し立てた側と言われた側、双方に発生する可能性がある「相手への敵意」を発生させないように、間を取り持つことも管理会社として必要不可欠であるといえます。要はお互いの熱を直接伝えない「断熱材」のような存在になることです。






