「私はあの男と縁を切ったので」娘に言われた滞納者の再生への道①

切なさと希望の話です

きっかけは新規物件の滞納

「私はあの男とは縁を切ったので、連絡もしないでください」

電話を切られてしまいました。

はぁ、参ったな・・・

発端は当社に新規で管理の依頼のあった物件でした。

こちらの物件は築年数も30年を超え、10世帯あるアパートの内空室が7部屋もあるという状態でした。

しかも残り3部屋の内1部屋は6ヶ月以上の家賃を滞納している状態だったのです。

この惨状を憂いたオーナーさんが当社の噂を聞いて管理の依頼がありました。

その後、家賃設定やリフォームなどを実施し、空室はその後すぐに満室になったのですが、問題はこの滞納者でした。

年齢は65才男性で一人暮らし、古くからの入居者の為保証会社の加入は無し、電話や訪問をしてもなしのつぶて、全くの無視です。

当初の契約書に記載されている職場も既に退職し、噂では無職ではないかとのこと。

お名前はAさんとしましょうか。

前任の担当もとうとうギブアップということでした。

今回は最初から私自ら督促に向かうことにしました。

唯一の身内である娘さん

そして冒頭の言葉です。

連帯保証人の娘さんに電話をしたところ開口一番言われました。

前管理会社も匙を投げたのが、唯一の連帯保証人である娘さんの存在でした。

とにかく連帯保証人になったのはいいが、お父さんの滞納やそれ以外の問題でも度々連絡が来ることで参ってしまったのです。

無理もありません、前の管理会社の頃から滞納について度々連絡をされ、請求され、なにかと責任を取らされ続けてきたのです。

そしてそれでも連帯保証人という重い役目に縛られ続けていました。

保証会社もナシ、連帯保証人は関わりたくない、本人は連絡も取れない、仕事もしているかも分からない

ふーむ

私は再度娘さんに連絡して言いました。

「連帯保証人を外れる為に協力してくれませんか?」

「え?どういうことですか?」と娘さんはようやく聞く耳を持ってくれました。

娘さんは今までそんなことを言われたことが無かったのでしょう。

聞く耳を持っていただけました。

そして、娘さんと一緒にお父さんのアパートへ行く約束をすることが出来たのです。

この時私には解決への道筋が一本だけ見えていたのです。

しかし、その方法は蜘蛛の糸よりも細く、不確定要素しかありませんでした。

娘との久々の対面と罵倒

約束当日、私は副社長と2人で現地へ行きました。

そして警察の方にも来ていただきました。

なぜ警察を呼んだかというと、それなりの高齢であり、連絡も取れない。

そう、万一室内で倒れたり死亡している可能性もあったからです。

程なくして娘さんが来ました。

車から降りて自己紹介をすると隣に男性が一人立っていました。

旦那さんかな?と思いご挨拶をしたところ、娘さんの友人のような方で、私に会うなり

「管理会社も大変ですね、言っちゃなんですけどあの親父はクズですよ」とかなりの怒気をはらんだ言葉を発してきました。

恐らく今回立ち会うにあたって、信頼している人を連れてきたのでしょう。

そして普段娘さんからお父さんのこれまでの行動を聞いて同情し、憤っているのでしょう。

警察の方には事前に話しておりましたが、現地でも状況を伝えます。

そして警察の方が玄関先から声を掛けます。

「Aさーん、こんにちは〇〇警察の者です。開けてくれませんか?」

文言を少しずつ変えながら声を掛けますが返答がありません。

警察の方は

「返答がないので、鍵を開けましょうか」と言い

私は住戸の鍵を警察へ託しました。

鍵を差し込み警察の方がドアを開けます。

この瞬間だけは何度立ち会っても慣れないものです。

すると警察の方が言いました。

「あぁ、いらっしゃったんですね」

私も覗きこみます。そこには

玄関から見える居間にこちらに背を向けて座っているAさんがいました

その状態で警察の方に呼ばれて振り向きました。

小太りで頭髪も薄くなり、下はジャージで上は肌着のような恰好のAさん

そして流石に観念したのか、玄関の方へ少しずつ歩いてきます。

警察の方は

「無事そうですね、それではこれ以上のことは我々の管轄外になりますので、我々は失礼します」

お礼を伝えて、それではAさんと話しをしようかなと思った矢先

「あんたどんだけ迷惑掛ければ気が済むの」

と娘さんが第一声

続いて娘さんの友人も続きます

「お前、こんだけの人に迷惑かけてさっさと出てこいよ」

その後も2人から次々と叱責を受け続けます。

うな垂れて目線を玄関の土間に移しながら立ちすくむAさん

私は娘さんと友人を制して

「Aさん、今日は滞納の件と安否確認の為に参りました。初めましてロータスホームの内田です」

と間に割って入りました。

するとAさんは

「娘を連れてくることはないじゃないか」と小声で言ったのです。

私はこの時に

一つ目の賭けに勝った

と思いました。

私はAさんの滞納解決への道を全て思案していました。

仕事もしていない、周りのコミュニティも属していない、家族も娘さんの他いない、高齢である

そうなのです、彼には失う物がほとんど無かったのです。

滞納督促は以前の記事でも書きましたが、当の滞納者が「何を一番恐れているか?」が大事です。

この生活を失いたくない、これ以上のストレスは嫌だ、連帯保証人に知られたくない、仕事に支障が出るのは困る、滞納していることが世間にバレるのが恥ずかしい、など

人それぞれなのですが、私は過去の経験などからか、人と対峙すると「この人が何を恐れるのか?」を見つけるのが人より得意なのだと思います。

それが見つかれば後は簡単です。

その恐れる事態にならない方法、すなわち滞納の解決を本人と一緒に決めていくだけなのです。

ここでその「恐れる事態」で脅してはいけません。人間は恐れる事態で脅すと恐怖や絶望で前に進むことは出来なくなります。

あくまで「最悪の事態を私たちなら解決できる」という安心感もセットにしなければなりません。

脅したりで解消できるのなら、こんなに簡単なことはありません。しかし、脅すという行為では最初の何回かは支払うかもしれませんが、絶対に滞り始めます。

しかし、「これさえ達成すれば最悪の事態は来ないんだ」という安心感は強く、かえって回収率は大きくなるのです。

話を戻しましょう。

私はこの失うものがないAさんにとって唯一のアキレス腱が娘さんである可能性に賭けたのです。

嫌な奴だ、性根の悪い奴だと思われるでしょう。私もそう思います。

しかし、それだけ滞納の督促というのは厄介なのです。

払ってください はい、払いますで済むならどれだけいいか。

滞納というのは簡単には起こりません、その人の人生でかなりの問題を抱えているからこそ起こるのです。

その苦労や見たくないもの、聞きたくないものを大家さんの代わりに解決することが管理会社の役目なんだと思います。

長くなりますので、続きます。

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