
不動産屋と聞いて皆さんが真っ先に思い浮かべるのは、ビシッとスーツを着こなして、キラキラした新築マンションを案内する「営業マン」の姿かもしれません。
でも実は、不動産の世界にはもう一つの顔があります。
それが「賃貸管理」という仕事。
派手な広告や華やかな契約の裏側で、入居後のあらゆる「困りごと」を一手に引き受ける。
正直に言いましょう。
この仕事、みなさんには「クレーム処理係」と思われますが、めちゃくちゃ楽しいです。
特に飽き性な方にはピッタリで奥の深い仕事です。
ベテランになると、この特殊能力がゆえに替えの効かない人材になります。
ちなみに志望動機で面白いことに、バリバリの営業マンから「管理」に転向する人が意外と多いのをご存知でしょうか。
なぜなら、管理の仕事は自分でスケジュールをコントロールしやすく、一度コツを掴むと、これほど自分のペースで仕事ができる職種もないからです。
そして何より、この「管理」という荒波に揉まれると、日常生活でも無双できる「特殊能力」が身につきます。
今回は、私が現場で磨き上げた、プライベートでも使える最強の処世術をご紹介します。
① 揉め事が「怖くなくなる」―落とし所の見極め術

賃貸管理の日常は、まさに「カオスの見本市」です。
「隣の足音がうるさい」「ゴミの出し方がなっちゃいない」「家賃が払えない」。
電話が鳴るたびに、誰かが怒っていたり、困っていたりします。
ここで大事なのは、教科書通りの「正論」を振りかざさないことです。
騒音問題で「契約書に静かにしろと書いてあります」なんて言ったところで、火に油を注ぐだけ。
お互いに言い分がある中で、10:0の解決なんてこの世には存在しない。
そう割り切ることから始まります。
現場で揉まれ続けると、自然と「落とし所」が見えるようになります。
「相手はここまでなら譲歩するな」「ここを立てておけば、こっちは通せる」。
この嗅覚が身につくと、日常生活でトラブルに遭遇しても「はいはい、このパターンね」と冷静に対処できるようになります。
揉め事が「解決すべきパズル」に見えてくる。
こうなれば、もう怖いものはありません。
これは、私だけかもしれませんが、「怒鳴る人」への恐怖心が全く起こらなくなりました。
むしろ、怒鳴る人が現れた場合、その瞬間に「勝ったな」と思うようになりました。
ここまでは身に付ける必要はないですけどね。
②最強の「おねだり上手」―相手の懐に入る対話術

管理スタッフの仕事は、実は「お願い」の連続です。
建物を直したいからオーナーさんに「お金を出してほしい」と頼み、マナーの悪い入居者さんに「ルールを守ってほしい」と促す。
どちらも、相手にとっては「お金が出ていく話」か「自由を制限される話」です。
まともにぶつかれば、当然「嫌だ」と言われます。
そこで必要なのが、相手の心理的な壁を溶かす技術。
「内田さんがそこまで言うなら、仕方ないなあ」 そう思ってもらうためには、日頃の信頼関係はもちろん、相手が「YES」と言いやすい空気を作る、ちょっとした言い回しやタイミングの工夫が不可欠です。
これはプライベートでも威力を発揮します。
お買い物一つ、学校の先生との話し合い、部活動の運営、ご近所づきあいなど私たちの生活は「交渉」だらけです。
相手を論破するのではなく、相手に「花を持たせながら」自分の要望を通す。
この「可愛げのある交渉術」は、人生を驚くほどスムーズにしてくれます。
でも・・・・うちの奥さんには通用しないことだけが不思議でなりません。
③ 逆境で輝く「鋼のメンタル」―究極の客観視

最後に身につくのが、これです。
どんなピンチでも折れない、どころか、ちょっと楽しくなってくるくらいの「鋼のメンタル」です。
家賃滞納の督促に行って、無茶苦茶な理屈で逆ギレされる。
お気持ちは分かります。
私も昔は「なんでこんなに言われないといけないんだ」と、心をバッキバキに折られていました。
でも、ある時から気づいたんです。
「よくよく考えたら、トラブルのほとんどは自分が悪い訳ではないんだし」と。
以前もお話しした「程よい他責思考」をフル活用します。
トラブルが起きているのは「仕組み」や「状況」のせいで、私の人格が否定されているわけではない。
「お、今日もなかなかの難問が来たな」 そうやって問題を客観視し、絶望的な状況ですら冷静にいられるメンタル。
人生、生きていれば予想外の不幸やトラブルは必ず起きます。
そんな時、「まあ、死ぬわけじゃないし」「管理の現場に比べれば可愛いもんだ」と笑い飛ばせる。
この無敵感こそ、管理スタッフが手にする最大の報酬かもしれません。
人生に対する幸福感は増しますよ!
仕事は真剣に、だけども気楽に
賃貸管理というのは、とても楽しい仕事です。
最初はクレーム処理にストレスを感じるかもしれませんが、そのうち「人間とは?」みたいな感覚が身に付きます。
人間は一人一人個性があり、違う。とは言いますが、何千人、何万人と接していくとパターンが見えてきます。
そして、それに対応する「自分」というものが分かってきます。
あの人はこんな形でクレーム処理しているけど、自分には似合わないな!とグレードアップしていきます。
そうすると、賃貸管理の仕事というのはとても楽しくなってきます。
その副産物として、プライベートでも使える特殊能力が身に付きます。
ただし、悪用は厳禁ですよ。
肝が据わり、悪魔のような交渉術と鋼のメンタルを身に付けたビジネスマンが誕生するのですからね。

