
トラブルの時に基準となる言葉
今回は、賃貸住宅に住まれる方に知っておいて欲しい「受忍限度」という言葉をご紹介してみようと思います。
この言葉は一般的には馴染みのない言葉ですが、我々賃貸管理を行う会社では常識的な言葉です。
そして、今後皆さんがお住まいになる「集合住宅」と呼ばれるマンション・アパートでトラブルが起こった時にこの言葉が大きな基準として示されるのです。
その割にこの「受忍限度」という言葉の世間への浸透がイマイチだなと感じています。
特に隣人関係でのトラブルではこの受忍限度という言葉が大体基準となるのです。
それではご説明してみましょう
受忍限度とは「多少は我慢しなければいけないよ」ということ

アパートやマンションは「集合住宅」に分類されます。
一つの建物に複数の世帯が住むことを意味します。
そうすると、お隣さんや上下階、あるいはご近所さんなどとトラブルが起こることもあるでしょう。
その時に疑問が出てきます。
どこからが迷惑行為として認められるんだろう?と
騒音問題を例にしましょう。
騒音というのはどこからが騒音なんでしょうか?
例えば物音一つ聞こえても騒音と感じる人もいれば、隣でドラムを叩かれても気にしない人もいます。
これは個人の感覚にもよります。
音に対して敏感な人であれば少しの物音でも不快に感じるかもしれません。
そうした時に、音に敏感な人の基準で生活をしなければならないのでしょうか?
そうであれば苦情を言った者が必ず勝ってしまいますし、場合によっては歩くことやテレビを見ることさえ不可能になる可能性もあります。
もちろん建物自体で遮音性も様々です。
超高級マンションなどになれば、かなりの防音性を備えることもありますが、それでも限度はあるものです。
完全防音マンションなどは理論的にはほぼ不可能ですが、もし可能だとすれば賃料は超高額になることは想像に難くありません。
こういった問題に対して「受忍限度」という言葉があります。
ちなみに受任限度を辞書で調べてみると
社会生活を営むうえで、騒音・振動などの被害の程度が、社会通念上がまんできるとされる範囲。これを超えると加害者が違法とされることがある。
要は
集合住宅に住む以上、ある程度のことは我慢しましょうね
という考え方です。
そしてこの受忍限度は多くの場合
過去の裁判での判例や様々な基準によって作られています。
そうでなければ「苦情を言われたが最後、生活がままならなくなること」だって起こり得るのです。
例えば「ドアの開け閉めの音がうるさい」という苦情があった場合
多くの人が「そこまで気にしなくていいんじゃない」という音だったとしても、苦情を出した方を優先させてばかりいたらドアの開け閉めすらできなくなってしまうのです。
せっかく住んでいるにも関わらず、窮屈で怯える生活しか出来なくなってしまってはいけません。
また同様に騒音を出す方にも「自分は気にならないし、この程度は問題ない」という自分勝手な解釈も同様に迷惑です。
ある程度の基準がなければ、苦情の言い合いやトラブルの深刻化、はたまた凄惨な事件などにも繋がってしまうのです。
住民同士のトラブルは最終的には裁判などで決着するほかありません。
そんな歴史の中でこの「受忍限度」という基準が作られてきたのです。
ですから、皆さんも住民同士でのトラブルなどが発生した場合には
この問題はどの程度が受忍限度とされているんだろう?という基準は知っておいても損はありません。
身近な問題の受忍限度

それでは賃貸住宅における受忍限度とはどんなものがあるのでしょうか?
その前にですが
受忍限度といえど絶対ではない
という真実もあるのです。
受忍限度とはあくまで目安、個別の事情や状況によっても変動するのです。
「じゃあ意味ないじゃん」と思わずに・・・
大体、我々の住む社会は善悪もハッキリしていないですよね、10:0でどちらかが正しいということは余程のことが無い限りありません。
とはいえ、この基準を大きく上回っていたりすると、裁判までいった時には勝つ可能性が高く、「被害」として認められるというような基準であることも同時に必要です。
一つ一つはいつか解説することもあるでしょうから、今回は解説は省きます。
もしご興味があればぜひ調べてみてください。
- 騒音の基準は45㏈~70㏈以上 ※環境省 環境基準より
- ベランダでのタバコの喫煙は規約等で禁止されていなければ 一日数本程度 ※最近変わった健康増進法でも禁止はされていない、但し頻度や本数により損害賠償の対象となるケースもあるので配慮は絶対必要
- 日当たりは日影規制(斜線制限など)による部分が大きい
- 建物の傾きは「3/1,000以内」、中古住宅なら「6/1,000以内」
他にも悪臭や水質など様々なものがありますが、判定は微妙なものも多いものです。
しかも、基準を超えたら即ダメかといえば「頻度」「環境」など複雑な要素が絡んできます。
ある一時だけ超えてもダメで恒常的になどの要件もあります。
意識の高まりと他者への厳しさ

昨今、地域や社会との繋がりは昔に比べると希薄になってきました。
昔は地域や顔馴染みなどで「お互い様」という精神が強かったものです。
現在は個人の尊厳や多様性の重要さがフォーカスされることにより、価値観も様々になってきました。
現在はどんな問題でも「勝ち負け」や「白黒」をハッキリとつけたがる風潮により、他者への厳しさが強くなってきたように思います。
その為「私が不快に思うのだからやめさせろ」と「私の自由だから」という相反する価値観のぶつかり合いが増えてきているのかもしれません。
本来、共同住宅では互いに配慮しつつ、皆で快適に暮らそう。というものです。
自分勝手にふるまってもいけませんし、自分の価値観だけを絶対と思い過ぎてもいけません。
お互いに配慮しつつ、それでもお互いの尊厳を尊重しあうことが本当の「多様性」ではないでしょうか。
そんな「個人の感覚」に頼らない為に、解決法や基準としての「受忍限度」という考え方があるのです。
本来はこの受忍限度という考え方すら必要としない方がいいのでしょうけれど、社会は後戻りは出来ないでしょう。
国や法律でもっと厳格な受忍限度を策定して欲しいな とすら管理会社の立場では思うようになりました。
一方、私個人としては、生活の仕方や時間までがんじがらめになっていく社会は息苦しそうだなと思いますが、仕方のないことなんでしょうかね
管理会社の代表者としては厳格な基準を欲し、個人としては曖昧な余白を求めている
こんな相反する感情を持つのが人間なのにな・・・と思ったりします。
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